手術
・高位結紮術
下肢静脈瘤の多くは、「大伏在静脈」「小伏在静脈」が拡張した「伏在静脈瘤」と呼ばれるタイプです。「大伏在静脈」は足の付け根で「大腿静脈」に、「小伏在静脈」は膝の後ろで「膝窩静脈」に流入しています(図5、6)。「伏在静脈瘤」では、ほとんどの場合、この流入する部位で血液の逆流が生じています。高位結紮術とは、この流入する部位で静脈を縛ることにより、血液の逆流をおおもとから遮断してしまう方法です。下肢静脈瘤が軽度な場合には、この高位結紮術と硬化療法を併用して治療を行います。
・静脈抜去切除術
弁の機能不全を生じた「大伏在静脈」自体を、静脈瘤と一緒に引き抜いて切除してしまう手術です。下肢静脈瘤の中で最も多い「伏在静脈瘤」には、前述したように「大伏在静脈」にできるものと「小伏在静脈」にできるものがあります。そのうち、「大伏在静脈」にできた静脈瘤に行う、最も確実な治療法です。「小伏在静脈」にできた静脈瘤の場合には、神経を損傷する危険性が高いため、高位結紮術を行っています。
この手術では「大伏在静脈」を静脈瘤とともに引き抜いて切除しますが、その切除する範囲は以下のようになります。 「大伏在静脈」は、足の付け根から足首まで走行しています(図7)。足の付け根(1)と足首(4)に傷を置いて、(1)から(4)まで「大伏在静脈」をほぼ全長に渡って切除することが最も確実な治療法といえます。しかしその場合、手術後、皮膚の知覚が鈍くなったり、しびれや痛みが出現することがあります。これは、切除の際に膝の下からふくらはぎに分布する知覚神経(伏在神経)が傷ついてしまうことが原因です。
このような手術に伴う障害を少なくするために、(1)から(3)までの切除、あるいは(2)から(3)までの切除を行っています。切除する範囲を徐々に縮小していますが、「大伏在静脈」には膝の上と下に「大腿静脈」「膝窩静脈」との「交通枝」があり、この部分の切除は最低限必要と考えています。
「大伏在静脈」を取り除いてしまって大丈夫なのかと心配される方もおられますが、流れていた血液は別の経路を通って心臓に戻りますので心配ありません。