後縦靭帯骨化症とは、脊椎椎体の後縁を上下に連結し、脊柱を縦走する後縦靭帯が骨化し増大する結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて知覚障害や運動障害等の神経障害を引き起こす病気です。骨化する脊椎のレベルによってそれぞれ頚椎後縦靭帯骨化症、腰椎後縦靭帯骨化症と呼ばれます。
頚椎にこの病気が起こりますと、最初にでてくる症状として首筋や肩甲骨周辺に痛みやしびれ、また特に手の指先にしびれを感じたりします。次第に上肢の痛みやしびれ範囲が拡がり、下肢のしびれや知覚障害、足が思うように動かないなどの運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の運動障害など出現していきます。重症となると排尿や排便の障害や一人での日常生活が困難となる状態にもなります。また、胸椎にこの病気が起こりますと、上肢の症状以外の頚椎時と同じ症状になります。初発症状として下肢の脱力感やしびれ等が多いようです。
また、腰椎に起こりますと歩行時の下肢の痛みしびれ、脱力等が出現します。これらの症状は年単位の長い経過をたどり、良くなったり悪くなったりしながら次第に神経障害が強くなってきます。慢性進行性のかたちをとるものが多いようです。中には軽い外傷、たとえば転倒して特に頭など強く打たなくても急に手足が動かしづらくなったり、いままでの症状が強くなったりします。
病気の原因については多方面にあたり研究されています。しかし明らかな原因は不明です。この病気に関係するものとして家族内発症があるということ、性ホルモンの異常が存在すること、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局部ストレス、またその部位の椎間板脱出などいろいろな原因が考えられています。特に家族内発症においては遺伝子の研究から有力視されています。
国内の一般外来を受診する成人の頚椎側面単純レ線写真からの調査では、1.5%~5.1%の発見頻度があります。中華人民共和国の50歳以上でも2.7%の頻度で認められています。
従来からアジアに多く認められる報告されてきました。しかし最近のアメリカ合衆国の報告でも1.2%の発見頻度が報告され、この病気の地域偏在性は少なくなってきました。男女では、2:1と男性に多く、発症年齢はほとんど40歳以上です。
この病気に対する主な手術 |